松本雅弘牧師の日々のみことば

月曜から金曜の毎朝、高座教会の牧師からメッセージをお届けします

「天皇誕生日」に思うこと―「アッバ、父よ」と呼ぶ意味

「地上の者を『父』と呼んではならない。あなたがたの父は天の父おひとりだけだ。」(マタイ23:9)

 主イエスが、神を父と呼ぶようにと示されたきっかけは、弟子たちが、「わたしたちにも祈りを教えてください」とお願いしたことにありました。
それに対して、「こう祈りなさい」と前置きをした上で、「アッバ、父よ」と呼び掛けるように言われたのです。
主イエスが地上の生涯を送られた当時、ユダヤはローマ帝国の支配下にありました。そこで何が起こっていたかと言いますと、ローマ皇帝が植民地の住民に対し自らを「父」と呼ばせるようにしていたのです。
ゼウスとかジュピターが、「天の父」であり、ローマ皇帝はそうした神々の地上における代理者としての「父」として、自らを現人神として崇拝させることを強要していた時代です。
ところで今日は天皇誕生日です。またつい先日の11日は「建国記念の日」でした。
戦時中、日本の歴史を天皇中心の神国の発展としてとらえる歴史観による教育のもと、天皇が現人神であることが教えられていた歴史があり、天皇制の下で信教の自由が守られなかった時代がありました。
どこか主イエスの生きていた時代と重なって見えて来ます。
今日の聖句は、そうした時代にあって、主イエスが語られた言葉です。
「地上の者を『父』と呼んではならない。あなたがたの父は天の父おひとりだけだ。」
主イエスのこの発言の背景には、このような政治的緊張がありました。そのような中で、敢えて主イエスは、ローマ皇帝に対してではない、皇帝と言えども神の被造物に過ぎない。
ですから、被造物である人間を神にしてはならない。むしろ、主イエスご自身が祈りを捧げ、導こうとなさったお方を指して、「アッバ、父よ」と呼びかけるように教えられたのです。
天皇誕生日の今日、主イエスのこの御言葉を思い巡らしたいと思います。

 いってらっしゃい。

 牧師 松本雅弘